人間たちの話
柞刈湯葉さんの『人間たちの話』を読みました。
あらすじ
どんな時代でも、惑星でも、世界線でも、最もSF的な動物は人間であるのかもしれない・・・。火星の新生命を調査する人間の科学者が出会った、もうひとつの新しい命との交流を描く表題作。太陽系外縁部での人間の店主が営業する”消化管はあるやつは全員客”の繁盛記「宇宙ラーメン重油味」。人間が人間をハッピーに管理する進化型ディストピアの悲喜劇「たのしい超監視社会」、ほか全6篇収録。 本著背表紙より
感 想
著者初の短編集らしいけれど、他の作品は私は読んだことがなく、今回が初めての作品となります。なにより解説が面白と感じたのは本著が初めて。誰が読んでいるかわからないし、どのような時代に読まれているかも分からないことを前提に、この本は焚書になるような本ではないのだ~と謳っている部分なんかは、笑ってしまったほど。そもそも作者本人が解説しているところが面白い。ちなみに、本著の表紙はあらゐけいいちさんが手がけているのだが、そのイラストがかわいらしくて好きだし、作中に出てくる主人公?達を描いているので、見てから読むとキャラが想像しやすくて読み易い。以下、各短編の簡単な感想を。
・冬の時代
氷河期に逆戻りした?未来の日本のディストピア小説。狩猟武器として使われている「電ポン」なるのものの音が間抜けそうなのが好き。
・たのしい超監視社会
ジョージ・オーウェルの1984年を皮肉った、相互監視はゲームとして楽しいよね?というアンチ?小説。監視することでポイントが加算され、それが機能している様は現代のSNSによる任意監視を想像させる。
・人間たちの話
理系の話題が一番強め。でも、これを取り巻く人間模様の方が気になってしまった作品。主人公と甥の関係。親子って?生物って?この主人公の冷徹さは一種のサイコパスかも。
・宇宙ラーメン重油味
コメディ枠。宇宙のあらゆる生命に対応できるラーメン屋の物語。SF好きな人の受けは良いらしい。
・記念日
ある日自宅に大きな岩がありましたとさ。おしまい。そんな話。読んでいてカフカの「変身」を思い浮かんだのは私だけでしょうか?
・No Reaction
想像されてきた透明人間とは異なり、あらゆる物や人に干渉できない透明人間は非常に都合が悪い。という物語。読んでいて「あぁ~なるほどね。透明人間にも苦労があるのだなぁ」と感慨深くなってしまった。細かい点での突っ込みはあるかもしれないけれど、そんなのいいじゃない。
ということで、面白かったのです。